八潮市大曽根
 < 第 1期調査 >
 やや広い湿地があり、隣には以前各種昆虫類のみられた草地があったが、改修工事のため消失した。主に土手沿いで調査したが、風が強く、微風晴天時以外にはスウィーピング、ルッキングによる採集は出来なかった。
 朽木はほとんどみられなかったが、数種のアリ類が営巣しており、分布の北限に近く東京都の皇居、赤坂御用地、常盤松御用邸、また千葉県市川市の昆虫調査でも記録されなかったルリアリがみつかった。立ち木も少なかったが、ケヤキ、クヌギ各 1本で樹皮はがしを行なったところ、アリモドキ科のキアシクビボソムシの集団越冬が観察された。石起こしでは、カメムシ目サシガメ科のアカシマサシガメ、モモブトトビイロサシガメ(すべて幼虫)、ナガカメムシ科のコバネヒョウタンナガカメムシ、ヘリカメムシ科のツマキヘリカメムシの集団越冬が特に目立ち、コウチュウ目ではゴミムシダマシ科のコスナゴミムシダマシ、コメツキムシ科のヒメサビキコリの集団越冬もみられた。この他、カメムシ目ではアシブトマキバサシガメ、トゲサシガメ、クロモンサシガメ、ケブカヒメヘリカメムシ、ツチカメムシ、オオクロカメムシ、ヒメクロカメムシ等の多種が狭い範囲の中で採集された。暖かい日には、セイヨウカラシナで各種ハナアブ類の訪花が観察された。
 < 第 2期調査 >
 大曽根ビオトープの工事が終了した直後であり、湿地としての景観は不十分ではあるが、池の周囲をヨシが覆い、今後水質の浄化に一役買ってくれることを期待する。湿地周辺は草刈りが頻繁に行われているため、昆虫相が貧弱な印象を受けた。むしろその周辺地域の叢地に多種の昆虫が見られることから、今後の湿地環境保全の取り組みに何らかの示唆を与えてくれているものと思われる。
 まず、チョウ目の蝶の仲間では、4月の最初の調査でシロチョウ科のツマキチョウのオスとメスがそれぞれ採集された。5月以降の調査では、タテハチョウ科のツマグロヒョウモンが多数見られた。8月の調査では、農家脇のマテバシイの葉上にシジミチョウ科のムラサキツバメ(オス)が静止しているのを目撃した。また、チャバネセセリやキマダラセセリが比較的多く見られ各々が採集された。9月の調査ではアゲハチョウ科のクロアゲハ(オス)やキアゲハ(オス・メス)、ナガサキアゲハ(メス)等が採集された。
 蛾の仲間では、5月の調査でクワの葉上にクワコの幼虫を 3頭確認した。また、ヤガ科のオオシラナミアツバやツトガ科のヒメトガリノメイガが数頭確認された。6月の調査でクヌギ樹幹に静止中のスズメガ科のサザナミスズメが採集された。7月の調査ではヤママユガ科のオオミズアオ(オス)やヤガ科のオオウンモンクチバが採集された。また、スズメガ科のブドウスズメの幼虫がヤブガラシで確認された。湿地周辺ではハマキガ科のヨツスジヒメシンクイが数頭目撃された。8月の調査ではスズメガ科のオオスカシバを目撃した。また、池に隣接するアンズ畑内では、スズメガ科のモモスズメ(メス)が採集された。
 コウチュウ目では、4月の調査で春先によく見られるモモブトカミキリモドキが採集された。また、糞虫の仲間のマグソコガネが採集された。5月にはアンズ畑内からウメチビタマムシが採集された。また、コガネムシ科のクロコガネやヒラタハナムグリが採集された。6月の調査で、アンズ畑内に植えられたクリの木の花にテントウムシ科のアカホシテントウが多数見られ、数頭を採集した。また、コガネムシ科のドウガネブイブイやコアオハナムグリが採集された。7月には小さな水溜りからゲンゴロウ科のハイイロゲンゴロウが採集された。9月には北米からの外来種であるコルリアトキリゴミムシが採集された。土手沿いの農家の脇にある 1本のクヌギからは樹液が殆ど出ておらず、期待された大型甲虫は確認できなかった。
 トンボ目では、7月の調査で湿地内の水辺をパトロール飛翔していたヤンマ科のギンヤンマ(オス)が採集された。同所でコシアキトンボのオスも採集された。また、湿地内ではないがオオシオカラトンボのメスも採集され、同所でチョウトンボが 1頭確認された。8月にはコノシメトンボのオスが採集された。
 カメムシ目では、4月の調査で青色の強い光沢を放つカメムシ科のルリクチブトカメムシが採集された。またヨコバイ科のコミミズクも採集された。7月にはナガカメムシ科のヒメジュウジナガカメムシが採集された。セミ科では 7月にニイニイゼミの羽化殻を採集し、当地での発生を確認した。
 ハチ目では 5月の調査で、ドロバチ科のサトジガバチが採集された。7月の調査で土手下の農家のハウスの鋼材部にスズメバチ科のコアシナガバチが営巣しているのを確認した。また、ベッコウバチ科のベッコウバチやドロバチ科のキアシトックリバチのオスメスが採集された。7〜9月は土手沿いの一画にヤブガラシ(ブドウ科)の群落があり多数のハチの訪花が見られたので、そこでの採集を試みた。まず、スズメバチ科のコガタスズメバチ(働き蜂)が多数確認され、他にフタモンアシナガバチ(働き蜂)やセグロアシナガバチ(働き蜂)、ツチバチ科のキオビツチバチやアカスジツチバチ、ヒメハラナガツチバチ、ベッコウバチ科のオオモンクロベッコウ、アナバチ科のコクロアナバチやアメリカジガバチ、ドロバチ科のスズバチ等が採集された。
 ハエ目では 7月の調査で、ツリアブ科のクロバネツリアブ、ミズアブ科のコウカアブやキイロコウカアブ、ムシヒキアブ科のシオヤアブやアオメアブが確認され、それぞれ採集された。また、湿地内の水辺にはミギワバエ科のミナミカマバエが多数確認され、数頭が採集された。9月には、ミズアブ科のミズアブとアメリカミズアブ、ミバエ科のミスジミバエがそれぞれ採集された。
 バッタ目では、9月にバッタ科のクルマバッタモドキが採集された。また、コオロギ科のカンタンも採集された。
足立区花畑 大鷲神社
 < 第 1期調査 >
 狭い面積ながらも、自然がよく保たれている。1月 27日の午後、入口付近のアカマツ樹幹に静止しているウバタマムシが得られた。近年、埼玉県でも記録の減少している種で、外部からの一時的な飛来か、あるいは生息しているのか継続調査を待ちたい。石碑とムクノキの樹洞の 2ヶ所ではニホンミツバチの営巣がみられた。花粉を団子状に集めて巣に運ぶ働きバチが幾つも観察された。近年都心部でも増加傾向にある。
 境内には朽木が多く、期待されたが、ハサミムシ目のハマベハサミムシとカメムシ目のオオモンシロナガカメムシがここでのみ採集された他、キマワリの幼虫と各所でみられたヒゲジロハサミムシとアカシマサシガメが観察された位で意外と種類は少なかった。一方、保存樹木のムクノキ、ケヤキ、エノキの大木が多くみられ、それらの樹皮はがしからは多くの昆虫類が得られた。特に目についたのは末同定ではあるがチビタマムシ類で、前記 3種のすべての木で集団越冬を確認した。テントウムシ類も多くの種がみられたが、中でも小型のムツボシテントウが多く、本種はオスが未知で単為生植をしていると考えられている。ムーアシロホシテントウ、ヒメアカホシテントウがみられ、ハムシ科でテントウムシによく似た形態のテントウノミハムシも多かった。この他コウチュウ目ではヒシモンナガタマムシ、ハロルドヒメコクヌスト、ヒゲブトハムシダマシ、クロウリハムシ、アカアシノミゾウムシ、ヒレルクチブトゾウムシ、カメムシ目は、アオモンツノカメムシとクサギカメムシ、ハチ目のハネジロアシブトコバチ、シミ目もセイヨウシミと未同定種の2種と多種が採集された。このように、調査地では群を抜いて多種の昆虫がみられ、自然度のあまり高くない周辺地域の中では貴重な存在となっていることが再確認された。
 < 第 2期調査 >
 周囲には人家が集中し、まとまった緑地空間が見当たらないためか、大鷲神社の境内に一歩足を踏み入れると、小さな森に迷い込んだかのような錯覚に陥ってしまうほど都会の喧騒を忘れさせる。そこは人々の憩いの空間でもあり、生き物にも安らぎを与えてくれるオアシス的な役割を果たしている。
 まず、チョウ目の蝶の仲間では、4月に春限定のツマキチョウがオスメスともに採集された。5月に入ると北進著しいナガサキアゲハのオスが採集された。また、8月と 9月にはツマグロヒョウモンのメスが確認され 9月に 1頭が採集された。冬期の調査でエノキの落ち葉裏にゴマダラチョウの越冬幼虫を確認していたが、9月の調査で成虫(メス)が採集された。蛾の仲間では、5月にヨモギエダシャクの成虫が採集された。これは夜間に便所の明かりに飛来したものがそのまま居残っていたものと思われる。8月にはサザナミスズメの成虫が採集され、9月にはトウネズミモチの葉上に終齢と思われるシモフリスズメの幼虫が確認された。コウチュウ目では、5月にヒメスギカミキリが採集された。境内の一角にツユクサの生えている場所があり、食草とするキバラルリクビボソハムシとアカクビボソハムシがそれぞれ採集された。同時にシダレヤナギの葉上からはヤナギルリハムシが多数採集された。トンボ目では、8月にオオシオカラトンボのオスが採集された。同時にマイコアカネのメスも採集された。ハチ目では、4月の調査でミツバチ科のニッポンヒゲナガハナバチのオスが採集された。4月と 5月にはフトハナバチ科のダイミョウキマダラハナバチが採集された。8月にはドロバチ科のスズバチが採集された。
足立区花畑 毛長川右岸
 < 第 1期調査 >
 立ち木、朽木ともほとんどみられないため、石起こしによる採集を行なった。最優先種はカメムシ目のアカシマサシガメとツマキヘリカメムシで、この他、バッタ目のクビキリギス、カマキリ目のコカマキリの卵のう、カメムシ目のオオウチワグンバイ、コウチュウ目のフタホシシリグロハネカクシ、ヒメサビキコリ、ヨツボシテントウダマシが比較的多くみられた。
 < 第 2期調査 >
 河川敷の陸地側の土手沿いに広い空き地が点在し、下草が適度に生え草刈りも行われていないため、蝶類やハチ、アブの仲間が多く見られた。
 チョウ目の蝶の仲間では、5月にシジミチョウ科のツバメシジミ、8月にタテハチョウ科のヒメアカタテハ、9月にはアゲハチョウ科のクロアゲハが確認された。また、シロチョウ科のモンキチョウやモンシロチョウも多数確認された。蛾の仲間では、5月の調査でヤガ科のオオバコヤガが採集され、9月にはマダラガ科のタケノホソクロバの幼虫が確認された。コウチュウ目ではテントウムシ科のジュウサンホシテントウが採集された。カメムシ目では 4月の調査でキジラミ科のベニキジラミが採集され、5月にはカメムシ科のシラホシカメムシが採集された。ハチ目では 4月の調査でミツバチ科のニッポンヒゲナハナバチ(オス)が採集され、5月には同じくミツバチ科のシロスジヒゲナガハナバチ(オス)が採集された。また、ハキリバチ科のバラハキリバチが 5月に採集されたが、営巣場所が捨てられた小さな楽器(ラッパ)内であり、音の出口部分から内部へ侵入するのを確認した。ハエ目では 9月の調査でツリアブ科のコウヤツリアブが採集された。バッタ目ではバッタ科のトノサマバッタ(メス)が確認された。