< 第1回調査日:平成19年2月13日(火) >
 異常暖冬といわれる中、池の空気は春を感じさせるがまだ冷たい。水面は水草の姿も無く冬模様の沈んだ静けさ。都会の中の湿地だが綾瀬川の遊水池様で生活排水の流入も少ない様子。池の汚れは川次第というところである。
 採集調査したのは東側小池と大池。小池はヘドロ多く、夏の腐敗が予想される。生物は少なめで、アメリカザリガニやユスリカ等、ここでは環境汚染度の高い生物が採集された。大池は、東側底部は泥深く、周辺部でもところにより胸まで沈みそう。導水溝のある西側は粘土質の底で状態はよく、成長したギンブナやテナガエビ、タイリクバラタナゴも生息。外国種のブルーギルも多数共存しており、今後の在来種の存亡変化に目が離せない。
< 第2回調査日:平成19年3月5日(月) >
 荒天予報の中、南風暖かい未だ静かな水面。まだ、虫の動きは無いが、一匹のアメンボ発見。水面に飛んだ小さな虫を採集、ミズギワカメムシだった。異常暖冬のところ、昆虫が動き出す。前回調査時より増水していて水路から綾瀬川へ流水中。前回同様の魚種にモツゴが一匹加わった。ギンブナは 3cm〜13cmの 8匹。タイリクバラタナゴは計7匹。10数ミリの稚魚数匹はタイリクバラタナゴと思われる。ブルーギルやカダヤシとしっかり共存だ。ヌマチチブも 10数ミリの稚魚 4匹。アメリカザリガニも小さめで 11匹。
 池の中央部でしばらく顔を上げているカメが見られた。水面に浮いた動作からアカミミガメと思われるが捕獲できず、写真のみを添える。水の動いているところはヘドロも少なめで、多彩な生き物が期待できそうな湿地だ。
< 第3回調査日:平成19年3月22日(木) >
 東京の桜開花直後だが春の冷風。池の水は前回より冷たい。北側工事の関係か、大池の水位は低い。昆虫は飛ぶ気配なし。アオサギ、ダイサギ、カワウが魚を採る。北側の小池に成長したフナ多い。20cmのコイ 1尾、モツゴ 7cm 1尾、ヌマチチブ 7.5cmの卵持ちほか稚魚 18尾。タイリクバラタナゴは婚姻色がきれい。前回に多く採集された稚魚は見かけない。ブルーギルは成長しつつあり魚種では最多の 24尾。14cmの成魚は卵持ち。今回新たに、11.5cmのオオクチバス一尾採取。アメリカザリガニは大小計 40尾。テナガエビも目立ち、3cm〜7cmで計11尾。
 池の中央でカメが浮いて眺めているのを撮影。第 2回調査と同様にアカミミガメと思われるが捕獲できず、写真のみを添える。採取したタニシは 13個中 5個は死殻。かなり魚に食べられている模様。
< 第4回調査日:平成19年4月13日 >
 春の桜も散って、気温水温とも上がりつつあるところ。午前中、池の水位は極端に低く、泥の底も露出して、アオサギ、ダイサギ、カルガモ等が採食中。池中央付近では大きなコイが背びれを見せて盛んな産卵行動で波を立てる。40cm以上の緋ゴイが一匹網にからまった。水中の根株などに付着したコイの卵が多数見られる。
 この池は潮の満ち干で水位が変わるとの話。なるほど、午後には水が上がってくる。風が強めで昆虫は見えなかったが、アメンボを採取。アメリカザリガニやヌマチチブが目立つが、フナやタナゴ類、ブルーギルまで網に多くはかからない。綾瀬川からの流れに魚も乗っているのかもしれない。午後、投網をかけると稚魚の小群れを採取。ボラの稚魚集団が上っていた。イトトンボのヤゴは前回と同種。前回分を持ち帰ってアジアイトトンボの羽化を確認したもの。北側に新池が完成し、水が動いている。生物の変化が興味深い。
< 第5回調査日:平成19年5月18日 >
 うす曇、気温も水温も前回より上がってきたが、ちょうど正午の干潮で池の水位はかなり低い。風あるが、水面等、空気はいたって静か。鳥の影、まるで無く、葦原に昆虫の姿も少ない。ナナホシテントウ、トゲヒシバッタが見えた程度だったが、わずかに、水面でアメンボを採集した。大潮のせいでもあるのだろうか。コイやフナ等の大型種の気配も無い。泥の多い大池東側では、アメリカザリガニやヌマチチブ多いが、やがてコブナの群れが採集できた。西側で行った投網ではアオミドロの繁茂がみられ、モツゴの稚魚やオオクチバス等の成魚が採れる。タイリクバラタナゴやヌマチチブは良く成熟している。試みに、水質の COD 検査を行ったところ、100前後の値。この水質のわりには魚種各種の多彩ぶりに野生生物のたくましさをあらためて知る思い。尚、稚魚類や紛らわしいエビ類の同定については、千葉中央博物館で参考意見を聞いた。
< 第6回調査日:平成19年6月14日 >
 雨の予報だったが雲を見ながら調査開始。結構明るい雲だったが後半は小ぬか雨。干潮で水位、相変わらず低め、池は静かだ。時々ウシガエルのうなり声。水面のアメンボは賑わいを増した。
 大型のコイやフナ等は姿無し。モツゴやヌマチチブ等の小魚が目立つなか、複数のタイリクバラタナゴが婚姻色も鮮やかで元気。ボラも育ってきており、新たな一頭、ウグイを採取。初見のアベハゼは千葉中央博物館で調べた。大きめ、活発なアカテガニが土手に多数の巣を作って活動中。大池の岸辺にチビミズムシが群れて発生していた。この池の多様な生物相に感心する。
< 第7回調査日:平成19年7月16日 >
 7月 15日に台風 4号が房総沖を通過した直後の調査。干潮でもあり、池はいつもの様に静か。休日だがヒトケも無し。なぜか、バッタの幼虫やヤブ蚊も全くいないのが不思議。フナは中型だが金の光沢が出ている。タイリクバラタナゴもモツゴも、成魚と稚魚がいた。今回はハゼの仲間が 6種。一部は千葉中博で確認。
 新旧池の中間水路に仕掛けた網に小形のクサガメがかかる。ボラもよく通過している。新池の導水路が低すぎて確かに水が抜けすぎているようだ。旧大池の水が足りなくて、小動物が隠れられない。新水路を 30数センチ(約)は上げてよいかも。
< 第8回調査日:平成19年8月9日 >
 快晴、風も弱い真夏の猛暑。葦原高く茂りジャングル状態で、まず、通路を刈り込む。池は水位低くヘドロが現れ、水温も高い。新池水面で盛んに踊るボラを投網で採集、ウグイ、モクズガニもかかる。オオクチバスは成長して大口を見せ、ブルーギルも大小いる。それらにも負けず、タイリクバラタナゴは多く、よく成長していて色もきれい。新旧池間水路のシカケに小ぶりな雷魚がかかった。アカテガニは営巣多く、至って元気。テナガエビは特大。なぜか、アメリカザリガニは一頭もかからなかった。
< 第9回調査日:平成19年9月13日 >
 干潮まもない池は水位低くヘドロが現れている。新導水路が低位置のため、旧大池の水の入れ替わりがよくない様子。以前よりヘドロの増加が感じられる。大池の旧導水路の通水が必要だ。
 タイリクバラタナゴやブルーギルは稚魚もいて、ヌマエビも稚エビが多いのは、しっかり繁殖していることか。タイリクバラタナゴの産卵貝、ドブガイの稚貝を初見。新池のシカケ網には、大きく成長しているマハゼやボラ、16cmのアカミミガメもかかる。しっかり、綾瀬川とも交流している気配。
< 第10回調査日:平成19年10月11日 >
 干潮後でまだ水位は低め。以前より軽いヘドロ多く汚濁の進行を感じる。水の入れ代わりが足りないのか。今回初めてメダカを発見。また、小池での投網で珍種、カライワシを採集した。本来南の外洋性で東アジア沿岸やフィリピン、インド洋、アフリカ東海岸の魚で汽水域にも入るという魚。過去には利根川河口でのみ記録あるとか。県立千葉県内水面水産研究所に持参して確認、標本として求められた。この東京湾綾瀬川奥の池になぜ、現れたのだろうか。今回もアメリカザリガニは 1頭のみ。ブルーギル等外来種が多かった夏の環境にも負けず、生きていたメダカの発見はたのもしく、タイリクバラタナゴのたくましさも目立つ!
 今回採集分のマハゼやシマハゼ、タイリクバラタナゴなどにデキモノが見かけられ、公害病が懸念される。汚染が感じられるこの水環境でもしっかり生きている多種多様な生物、それらのたくましさが実感される池である。