(1)大鷲神社
 社殿を中心に周囲には常緑・落葉広葉樹が多く、林床の落葉はそのままにしてあり、昆虫採集は一般に禁止されていて、自然環境がよく保全されている。運悪く水抜きをされていたが池があり、水を充分にたたえていれば、様々な昆虫の棲み家として重要な役割を果たすことが考えられる。調査地域の中で直翅類、特に鳴く虫の仲間を除いては、最も昆虫相の豊かな場所であると言える。蝶の仲間では大型アゲハ類がひと通り見られ、テングチョウが目撃された。蛾では、足立区初記録のビロードハマキ第2化の成虫が多数見られた。初夏に夜間採集を行なえば、記録種は相当増えることが期待される。甲虫類では、都内では少ないコハンミョウが記録され、糞虫の仲間のセンチコガネや小型のチビタマムシが2種、キノコの中からオオキノコの仲間が2種採集された。トンボ類ではアカネ類の仲間はアキアカネ、ナツアカネ、ノシメトンボの3種しか得られなかったが、水抜きされた池に水が戻され、水辺環境が安定すれば、今回記録出来なかったイトトンボやヤンマなど多くの種がここを棲み家として発生することが大いに期待できる。ハチ類は、得られた種は少なかったが、没姿期にあたっているので、実際には多くの種が見られるものと思われる。セミはニイニイゼミが没姿期のため、羽化殻(セミの抜け殻)を探したが確認できなかった。ミンミンゼミはアブラゼミと同等かそれ以上の成虫が見られたが、羽化殻の調査ではあまり得られなかった。社殿に向かって右側のアジサイの葉より数個体の羽化殻を採集したが、アブラゼミとは発生場所が異なるのかもしれない。都内では少ないと思われる異色型のミカドミンミン(ミカド型)が1頭記録された。直翅類ではカネタタキが多く、地表にはノミバッタが多数見られた。
(2)毛長川左岸
 メヒシバ、エノコログサ、アカツメクサ、シロツメクサ、セイタカアワダチソウ、ヨモギなどが繁る陽当たりのよい叢地で人家の生垣には柿、ヤブガラシが見られた。上空にはウスバキトンボが目立ち、叢からはスウィーピングによってカメムシ類やハチ類、テントウムシ類、ハムシ類等が採集された。セイヨウミツバチに混じり、在来種のニホンミツバチもアカツメクサで吸蜜をしており、ヤブガラシの花には、コガタスズメバチや人家に営巣したコアシナガバチ、大型アゲハ類が好んで集まっていた。カマキリ目ではハラビロカマキリが多く見られた。アブ類では8月31日にムシヒキアブ科のトラフムシヒキが目立ったが、9月以降は没姿したのか見ることが出来なかった。
(3)毛長川右岸
 叢の幅は左岸に比べ狭いが、一部に草丈の低い空き地があり、公園にはエノキが見られた。エノキの幼木よりゴマダラチョウの羽化殻と中令幼虫を確認。またアケビよりアケビコノハの幼虫を採集した。川沿いにギンヤンマ(オス)が飛翔していた。得られた種は左岸に比べると少なかった。
(4)八潮市大曽根
 大きな池があり、岸に沿ってギンヤンマ(オス)がパトロール飛翔をしていた。この池ではトンボ類が期待されたが、シオカラトンボとアジアイトトンボが見られただけで、他の種は既に没姿期と思われた。土手沿いの農家の脇に1本のクヌギがあり、8月31日には樹液を出していて、ゴマダラチョウ、サトキマダラヒカゲ、シロテンハナムグリ、サビキコリ、オオナガコメツキ等が樹液を求めて集まっていた。9月以降は樹液が出ていなかったため、飛来昆虫の姿は見られなかった。蝶類ではキアゲハが見られた。池に隣接する空き地では8月31日にマメハンミョウが多数見られたが、9月には分散してしまい1頭も確認できなかった。叢ではゴミムシ類や直翅目の鳴く虫の仲間が多く見られた。