足立区桑袋ビオトープ公園・八潮市大曽根ビオトープ周辺の生物生息環境調査(調査期間:平成19年1月〜10月)
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昆虫調査 野草調査 野鳥調査 水生生物調査
おわりに
 
制作責任者 : 特定非営利活動法人 エコロジー夢企画
理 事 長   三  井  元  子
ツマグロオオヨコバイ

カラスノエンドウ

カルガモ
 念願の「足立区桑袋ビオトープ公園」開園後 2年目の調査が実施できた。(社)関東建設弘済会の公益事業継続助成のお陰である。
 昆虫調査は、第 1期調査(19年 1月〜3月)では、冬場でまだ昆虫の動きが活発ではないため、地味な調査となったが、その分ゆっくりと時間をかけて採集ができ、地域の状況がだんだん分かってきた。昆虫リーダーたちは、1ミリから 2ミリほどの珍しい昆虫を見つけては、ルーペでのぞき込みながら興奮して記録していた。すっかり昆虫少年に戻ってしまい、終了時間が来ても時間通りに戻ってくることはなかった。第 2期調査においても、生物が活発に動き出す 5月には、2回追加調査をして資料収集をしてくださった。その成果は、写真と 8箱に及ぶ標本を見ていただければお分かりになるだろう。その中でも特に美しいのは、オオシオカラトンボとウバタマムシだ。
 植物調査は、わたしもほとんど一緒に歩かせてもらった。ここは、水元公園を拠点にしている「みずもと観察クラブ」の植物調査チームのみなさんにとっては、貧弱な自然であったかも知れないが、コンクリート護岸で殺風景な綾瀬川の流域にとっては、貴重なまとまった自然地なのである。18年度 3月に上流側の池が完成したので、埋土種からどんな植物が顔をだすのか楽しみであった。果たして、ミズアオイ・ヌマガヤツリが生えてきて、自然地らしい景観を創出した。そのほか、植物調査では、タコノアシ、ゴキヅル、シロネ、シロバナサクラタデなども見られた。
 大曽根の湿地は、コンクリートで囲まれた綾瀬川下流から上流へ向かってくる野鳥が、最初に目にするまとまった自然地であり、大きな水面のある場所である。めずらしい渡り鳥が飛来しては新聞をにぎわすこともある貴重な場所だ。15年度調査では、迷鳥アカガシラサギを確認したが、今年度調査では、そのような変わった種には出会えなかった。しかしカワセミは毎回観察できた。
 水生生物調査では、造成された 3つの池から、ブルーギルやアメリカザリガニが多く出現したが、一方で、ウグイやカライワシ、モクズガ二なども採集できた。綾瀬川の水質も年々よくなっているということであろう。
 今回の 2つの調査地は、平成 7年、足立区の消費者グループ「せせらぎグループ」(代表:三井元子)が綾瀬川左岸の大曽根に 1ヘクタールの自然地(民有地)を見つけ、平成 8年「国が買取り、綾瀬川浄化の拠点として多自然型湾戸を整備をするよう」要望し、「合わせて礫間浄化施設を設置できる場所を近くに確保」するよう提案したことから整備が行なわれた場所である。平成 10年に買取りが成功し、このことから平成 11年には、国の地域戦略プランの予算がつき、八潮市「大曽根の湿地保全」と「足立区桑袋ビオトープ公園建設」が始まったのであった。
 「足立区桑袋ビオトープ公園」は平成 17年 5月にオープンした。八潮市大曽根の湿地の下流半分の工事は、平成 17年に完了したものの、上流側の半分が長年、綾瀬川の浚渫土置き場となっていたため、なかなか着手できなかった。が、ついに平成 19年にほとんどの工事が完了した。「せせらぎグループ」の 12年間の見守り活動が成就するのである。この間、検討委員会では様々な問題が起こり、全国の仲間に相談し応援してもらった。
 これから暖かくなり、植物や昆虫が活発に成長を始める。ぜひ、フィールドに出てこども達と観察を行っていただきたい。この 2地点のように多様な生物が生息できる場を作ってやることで、自然が豊かになり、そこで遊ぶこども達の体力も好奇心も育ち、文化度も向上していくのだと思う。
 エコロジー夢企画では、本調査とは別に、19年 7月 7日に「ガサガサ探検隊と綾瀬の魚を調べよう!」を実施した。このフィールドで水辺の安全な遊び方を知ってもらうことが主目的であった。昔は水利権の問題でもめていたことをアニメーションビデオ「まんが足立の今昔−蛇橋伝説−」(作画:木の芽会 前田テル)でみたあと、昆虫観察や魚の採集と観察画コンテストなどを行った。親子できらきら目を輝かせながら、自然の中で遊んだ。こういうフィールドが綾瀬川下流にできたことに大きな意義を感じた一日であった。
 最後に、本調査を実施できたことに謝辞を述べたい。推薦し、協力してくださった江戸川河川事務所にも感謝している。調査チーム、入力チーム、監修の(財)埼玉県生態系保護協会、エコロジー夢企画会員の皆様にも、あわただしいスケジュールをこなしていただき、大きな成果を得ることが出来たことに感謝している。今後、この地域を歩きながら自然や綾瀬川の水質や歴史に関心を持ってもらえるようなガイドブックを製作していきたいと思っている。より良い活動を構築していけるよう引き続き皆様のご指導と御協力をお願いしたい。
平成 20年 3月  
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