足立区環境デジタルマップ
・1章 足立区内の基礎情報 ・2章 足立区内の現況調査
・3章 環境意識調査結果 ・4章 行事・活動報告
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昆虫調査のまとめ 足立区の直翅目(バッタ目)についてのまとめ 本調査で見られた昆虫の説明
「桑袋ビオトープ公園」周辺について、平成15年秋〜冬の昆虫調査を行い、調査データおよび写真・昆虫標本などの成果を得ました。
■ 足立区の直翅目(バッタ目)についてのまとめ ■ 足立区(一部埼玉を含む)の直翅目調査一覧表
石水 史昭
1.はじめに
 本報告は、足立区(一部埼玉を含む)の直翅目を調査したものである。今回は、調査期間が8月から10月までと短かったため、十分な調査は出来なかった。
 本調査をするに当たっては、平成17年にオープンする足立区桑袋ビオトープ公園(仮称)周辺の綾瀬川、毛長川、伝右川合流付近の草地)を選定し、そこを重点的に調査した。そのため、多くの矛盾点はあるとおもわれるが、足立区直翅目の一応の目安として欲しい。
 一部に埼玉県八潮市大曽根ビオトープ(仮称)が含まれているのは、足立区の調査地点に埼玉県側の自然地が隣接しているので、その影響を知るためでもあった。
2.調査方法
 これには、目撃、捕獲、鳴き声の聞き取り、この3つの方法を用いた。それと、調査する時間も、朝、昼、夜と3段階に分け、生息環境とも合わせて調査した。また、捕獲できたものについては、状態のいい物だけを選んで標本にした。
3.調査結果
 2003年8月31日から10月5日までに行った調査結果は別表の通りであるが、実際にはこれ以外の直翅目もいると思われる。
4.考察
 夏の終わりから初秋にかけての調査だったが、今年は例年とくらべ直翅目類の成長が遅れていることが分かった。それが特に顕著だったのはコオロギ類である。冷夏の影響で羽化がおくれたものと思われる。そのために、コオロギ類が鳴きだしたのは8月の下旬になってからである。調査の段階で、9月に入ってもまだ、成虫になっていないものが多く見られた。
 次に個体数に著しい変化が見られたのはアオマツムシである。例年と比べると、極端に減っていた。これは足立区だけではなく、全国的にもその現象が見られる。
 反対に増加の一途をたどっているのがマダラスズやシバスズなどである。これは、いたるところで芝が使われるようになったことも要因の一つと考えられる。
 これとは別に平均して生息が安定しているものもいた。カネタタキである。これは、どこでも見られるくらい多く生息していた。
 今回の調査で特に個体数の多かったのはカンタンである。これは、戦後になって繁殖の輪が拡大したセイタカアワダチソウの影響ではないかと思われる。その証拠に、セイタカアワダチソウが生えている場所では、必ずといってよいほどカンタンの姿が見られた。
 次に、この仲間のヒロバネカンタンはどうなっているかを調べてみた。すると、今回調査した場所では見つからなかった。足立区内では、荒川河川敷にヒロバネカンタンが生息しているから、近い将来、ここにもやってくる可能性はある。
 調査をしていていつも思うことは、草地があって、生息条件が整っているにもかかわらず、そこに相応しい昆虫類がいないことである。何故かと思って、これをよく調べてみると、その原因がわかってきた。それは度重なる草刈りが要因の1つになっていると思われる。それでも棲みつく直翅目類がいたので、よく調べてみると、それらの中には飛ぶ羽根を持っているものが多かった。コオロギの仲間では、カンタンやアオマツムシなどである。カンタンは風に乗って飛び、アオマツムシは、街路樹伝いに移動して、それが切れると飛ぶという技をもって繁殖の輸を広げている。
 キリギリスやバッタの仲間は、そのほとんどに飛ぶ羽根を持っている。そして、飛行距離も長く、ちょっとした小さな川くらいは一気に飛び越えることもできるらしい。
 全体的に見て直翅目の種類は少なくなってきている。最近では、外来種のイネ科植物が増えたこともあって、イナゴ、バッタ、ツユムシが増えてきており、いたるところで同じような現象が見られている。一度絶滅したものは、もうかえってはこない。見た目の緑(芝一辺倒)だけではなく、「多種目の植物が混生した緑」にすることによって、多種類の昆虫がたくさん棲めるようになるのである。
 参考図書:
信州の秋に鳴く虫とそのなかま、1981年、信濃教育会出版部、小林正明著
分類にあたっては、上記の書に準ずる。
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