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4.考察 |
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夏の終わりから初秋にかけての調査だったが、今年は例年とくらべ直翅目類の成長が遅れていることが分かった。それが特に顕著だったのはコオロギ類である。冷夏の影響で羽化がおくれたものと思われる。そのために、コオロギ類が鳴きだしたのは8月の下旬になってからである。調査の段階で、9月に入ってもまだ、成虫になっていないものが多く見られた。 |
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次に個体数に著しい変化が見られたのはアオマツムシである。例年と比べると、極端に減っていた。これは足立区だけではなく、全国的にもその現象が見られる。 |
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反対に増加の一途をたどっているのがマダラスズやシバスズなどである。これは、いたるところで芝が使われるようになったことも要因の一つと考えられる。 |
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これとは別に平均して生息が安定しているものもいた。カネタタキである。これは、どこでも見られるくらい多く生息していた。 |
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今回の調査で特に個体数の多かったのはカンタンである。これは、戦後になって繁殖の輪が拡大したセイタカアワダチソウの影響ではないかと思われる。その証拠に、セイタカアワダチソウが生えている場所では、必ずといってよいほどカンタンの姿が見られた。 |
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次に、この仲間のヒロバネカンタンはどうなっているかを調べてみた。すると、今回調査した場所では見つからなかった。足立区内では、荒川河川敷にヒロバネカンタンが生息しているから、近い将来、ここにもやってくる可能性はある。 |
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調査をしていていつも思うことは、草地があって、生息条件が整っているにもかかわらず、そこに相応しい昆虫類がいないことである。何故かと思って、これをよく調べてみると、その原因がわかってきた。それは度重なる草刈りが要因の1つになっていると思われる。それでも棲みつく直翅目類がいたので、よく調べてみると、それらの中には飛ぶ羽根を持っているものが多かった。コオロギの仲間では、カンタンやアオマツムシなどである。カンタンは風に乗って飛び、アオマツムシは、街路樹伝いに移動して、それが切れると飛ぶという技をもって繁殖の輸を広げている。 |
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キリギリスやバッタの仲間は、そのほとんどに飛ぶ羽根を持っている。そして、飛行距離も長く、ちょっとした小さな川くらいは一気に飛び越えることもできるらしい。 |
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全体的に見て直翅目の種類は少なくなってきている。最近では、外来種のイネ科植物が増えたこともあって、イナゴ、バッタ、ツユムシが増えてきており、いたるところで同じような現象が見られている。一度絶滅したものは、もうかえってはこない。見た目の緑(芝一辺倒)だけではなく、「多種目の植物が混生した緑」にすることによって、多種類の昆虫がたくさん棲めるようになるのである。 |
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